アラスカ フェアバンクス発 感動体験

 

 

ネイチャーイメージ フォトエッセー 

 

“ A Lot of Nothing ”

~ Vol 49: おいでおいでと誘う巨大な手のひら ~

 

雄はじっと立ったまま動かず、雌はむしゃむしゃとヤナギを食べていた。

         

 

 

 

シロクマを見に行った帰路、夕暮れ時の北極圏でのこと。

いつも見慣れたはずのある川のほとりの

ヤナギの茂みの中になにやら妙なものがうごめくのを見つけました。

 

それは開いた左右の手のひらのようであり、かすかにゆらゆらと揺れているのです。

まるで、おいでおいで・・・と手招きしているよう。

 

だが、手のひらにしてはやけに大きい。

いや、大きすぎる。

それに、そんな巨大な手が、私たちを呼んでいるとしたら、

あくまでもなにもない、ありようもないツンドラの上で、

手の化け物が通りすがりの私たちに、やんごとないメッセージでも送っているとしたら。

 

ブルックス山脈に囲まれたある村には、

村人に知恵を授けた巨人が残したという手袋の伝説はありますが、

現代にその巨人が蘇ったとでもいうのでしょうか。

 

それはそれで好奇心を大いにそそりはしますが、

いかにも現実味に欠ける。

 

ほんのひととき思考を巡らし、

やはりその主はムース、

つまりヘラジカの雄の角であることに違いないという結論に達しました。

改めて目を凝らしてみると、茂みの中には雌と子供もいるようです。

 

いずれにせよ、場所を考えれば大変珍しいことは確かです。

私たちは、カメラを肩に提げると、ヤナギの茂みに分け入ったのでした。

 

 

 

~ 北の空より ~

 

 

2011年9月27日

かわうち まきえい

 

 

 

 

 

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